理科教育講座 化学分野
池山 剛 (物理化学、分子分光学)
オフィス 1号館1階西


○研究室で行っている研究
【目的】眼の中で起こっている反応や光合成など、光の関わる反応のなかには身近で重要なものが多くあります。本研究室ではこれまで主に、光吸収により生じ る「エネルギーの高い状態(励起状態)にある分子の性質」を調べてきました。これは、励起状態にある分子の性質を調べることが、光の関わる反応の機構等の 理解に役立つと考えるからです。
【方法】この目的には、蛍光や燐光と呼ばれる「発光」の測定、「励起状態にある分子による光吸収」や「時間分解ESR法」などの方法を用いてきました。ま た、励起状態の分子がもとの安定な状態に戻る際に、発光にならない余分なエネルギーは熱となるわけですが、この熱を測定することもしています。この 目的には「光熱分光法」、「熱レンズ法」などと呼ばれる比較的新しい方法を用います。
【対象】線形共役ポリエン類(スチルベン、ジフェニルブタジエン、オクタテトラエンなど)をこれまで主に扱ってきました。その際には、励起状態の構造と性 質の関係を調べるために、光によって異性化が起こらないように構造を固定した化合物について測定したくなることも多く、必要に応じて有機化学的な合成実験 も行います。
 その他、二酸化チタン、錯体、デンドリマーなども扱っています。
(私自身は暗室の中で燐光や蛍光のぼんやりした発光を見るのが好きですが、残念ながら最近は発光の弱い物質やESR(電子スピン共鳴)等発光の見えない測定をすることも多くなっています。)

○最近の卒業研究のテーマの例
(1) 非垂直エネルギー移動への単結合ねじれ回転の寄与
(2) 光熱分光法によるジフェニルブタジエン関連化合物の三重項生成量子収率の決定
(3) 室温流動性溶液中の最低励起三重項状態
(4) 二酸化チタン光触媒反応機構の時間分解ESR法による研究
(5) スチルベンデンドリマーの蛍光寿命に対する外部重原子効果
(6) ランタニド(V)ポリピリジン錯体の発光と電子状態の性質

◆ その他(ゼミ、テーマの決定、覚悟など)
 3年生の後期から、卒業研究に入るための準備として、研究室でゼミ(教科書を読む)を行っています。さらに4年生になると自分の卒業研究のテーマに関わった論文(主に英語)を読むゼミがこれに加わります。
 実際に卒業研究のテーマを決定する際には、いくつかのテーマを提示し、本人の希望も聞きながら決めることになります。卒業研究では、これまでの論文を調 べ、計画を立てて実験し、失敗を重ねながら改善し、ようやく結果が得られる、ということを繰り返して、何か少しでも新しいことを自分が明らかにして、卒業論文にまとめるという経験をしてもらいます。
 実験等を「きちんとやる覚悟」さえあるなら、数学や量子化学の素養がない、などと心配する必要はありません。興味のある人は、一度研究室まで話を聞きに(話をしに?)来てください。

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