理科教育講座 化学分野
笠井 香代子 (有機化学、錯体化学、化学教育)
オフィス 1号館1階西

【当研究室で行っている研究】
 我々の身のまわりにある化合物は、大まかに有機化合物と無機化合物に分類されますが、私がこれまでに研究してきたのは、その中間の位置にある錯体や有機金属化合物と呼ばれる化合物です。これは、ある種の有機化合物と、無機物である金属との結合を持っており、様々な有機合成に役立つものや、機能性を持つもの、さらには生体物質として知られているものもあり、非常に幅広い化合物です。私はこれまでに、"面白くて役に立つ"新しい錯体の合成に取り組んできました。最近では、金属イオンを配位子で架橋することにより、ネットワーク錯体(配位高分子ともいう)の結晶を合成してその構造を決定したり、役に立つ機能が発現できるかどうかを検討したりしています。
また、有機化合物や結晶を扱った教材開発も行っています。例えば、食品に含まれる物質(酒石酸、クルクミン、タウリンなど)を結晶として簡単に取り出せる方法を開発し、教材化を行っています。さらに、これらの教材の実践として、児童生徒を対象とした実験教室や科学コミュニケーション活動の企画や実施も行なっています。

【最近の研究のテーマの例】
(1)食品に含まれる酒石酸の教材化の検討
(2)ビナフトール誘導体によるキラル配位空間の構築
(3)身のまわりのものから取り出せる結晶性物質の教材化(尿素の教材化)
(4)結晶構造の普及を目指した結晶スポンジ法の教材化
(5)結晶スポンジ法に基づいたアルコールの分子構造教材の開発
(6)食品に含まれるタウリンの教材化の検討
(7)クルクミン類の結晶構造と教材化

 研究テーマは、こちらからいくつかを提示して、その中から選んでもらっています。コース・専攻でテーマを区別することはしていません。

【その他】
・3年生の後期から、卒業研究の準備として、結晶に関する本の演習や機器分析(X線結晶構造解析やNMRなど)の練習実験を行っています。また、児童生徒を対象とした実験教室の予備実験や準備、当日の運営などにも加わってもらいます。
・化学の合成の研究では、とにかく手や体を動かして実験を多くこなし、実験方法を身につけることがまず第一に求められます。机に座ってじっと考えるのが好きな人には、当研究室はあまりお勧めしません。もちろん、実験をやりながら考えることもある程度は必要ですが。
・ある有名な化学の先生が大学の教科書に書いていることですが、"化学好きの学生には2つのタイプがあり、一方は理論・計算が好き、もう一方はそれが苦手だがそのかわり物質が好き" とのことです。私は典型的な後者のタイプであり、いろいろな化学物質を扱って実験をしてみたいがために、この分野を選びました。当研究室では、様々な化学物質や実験方法を駆使して、新しいものを合成したり、画期的な新しい教材を開発したりしてみたい、という意欲のある学生を歓迎します。

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Miyagi University of Education.